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秘境シャングリラ 俺の細道

自然を主とした旅行ブログ

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自作恋愛小説 HIMITSU 禁断の愛 8

※ 突然再会した矢崎と言う男。実は彼女が娼婦として働いた置屋の常連客だったとは、。




11月の中旬、東京は銀杏並木の葉も、小金色に変わっていた。

幸福警備に入社して、早くも1ヶ月ちかくたとうとしていた。

このところ、会社の幹部隊員から吉雄の勤務態度が良いと評価されたのか、

連日、ひとりで現場を任されることも多かった。

現場で、仕事が終了するたびに会社に下番報告(終了報告)をしなければならない。

「吉雄さん、ご苦労様です。どうですか?だいぶ慣れたようですね。明日、銀座のほうで

ひとり現場の仕事があります。家からも遠くないですしやってみますか?

仕事内容は、ビル内にあるエレベーター部品の搬入警備です。歩道をまたいで部品を

運搬しますので、そのとき歩行者、自転車 車などを安全に誘導します。」

面接のとき吉雄を担当した幹部社員の声だった。

「はい、わかりました。やってみます。開始時間、業者名などお願いします。」

「それでは、メモいいですか?・・・・」

吉雄は、明日から一人現場を任されることになった。

場所は、昭和通り沿い、銀座2丁目だった。住所を聞いて、すぐどのあたりかわかった。

「ひとり現場は気楽でいいけど責任が重い。遅刻、早退、失敗もできん。」

電話口から受話器を置く手が、どことなく緊張していた。

吉雄は、明日一人現場のためか、緊張をしていて寝付きが普段より遅かった。

一方、ベトナムで暮らしている妻のアラーンは、矢崎という以前知り合いの男と部屋で

酒を酌み交わしていた。

矢崎は、棚にあったベトナムワインをアラーンから差し出されると、遠慮もなく朝から

飲みだした。

部屋は間口4畳ほどの洋間で、中央にベトナムスタイルの彫刻が施された、黒いテーブル

とイスがある。

ふたりは対面しあってグラスに赤ワインを注いだ。

3年の長い年月は、ふたりの関係をより赤ワインの熟成期間と重ねあわせるように、熟されたのだろうか。

「これいいでしょ。あの人が日本から持ってきてくれた人形よ。これを見ていると、日本に行きたく

なるわ。だってまだ私たち籍に入っていないから、日本へ行けないの。どうしてだかわかる?」

「さぁ~?俺にはわからんね。」

「吉雄さんが、結婚は急がなくてもいい、と言うのよ。お互い離婚歴もあることだし、それに

お互いこどもができない体かもしれないからなの。似たものどうしなよ。だから気があったの。」

矢崎は、その話を聞いたあと、グラス一杯に注がれた赤ワインを一気に飲み干した。

彼の額が、秒感覚で紅く染まっていくのがアラーンにもわかった。

アラーンは、もうこれ以上吉雄について、のろけ話をするのを控えた。

「アラーン、君には僕の気持ちが理解できなかったね。男というのはね、想いを寄せている女性が

いると、胸が熱くなって何も手につかなくなる男もいるんだよ。恋の病さ。

僕は、足掛け3年、どこにいるかわからない君のことをずーと想い続け、探し続けてきたんだ。」

矢崎は、ゆっくりとひとつひとつの言葉を選んで静かに話した。

外は、まだ雨が降っている。しかしふたりには、地面を強く叩きつけている雨音さえ、耳には

入らなかった。

アラーンも中国で働いていた当時、矢崎がひそかに恋心を抱いていたことはわかっていた。

店に遊びに来るのは、月に多くても2,3回程度、アラーンにとっては、それほどいい客でもなかった。

週のうち何度か、携帯電話でのメールのやり取りをする程度で、彼からは体への気ずかいの

内容が多かった。

それに反して、吉雄は毎日のように、店へやってきて、彼女が接客をしていない時を選んで、暇そうな

時間に密会していた。

吉雄もお金を払うことにより、彼女と接することができない現状にひどく悩んでいた。

一層のこと遠く離れたところへ行って、彼女のことを忘れようとしたこともあった。

考えを改め、現状を理解したうえで、もっとも彼女のためにもなることは、お金を使って遊ぶことか、

それとも店をすぐにでもやめさせ、一緒に暮らして生活を面倒みるか、二つに一つだった。

「あなたね、あのとき私にたくさんメールくれたけど、百回の言葉より行動よ。男はね、もちろん女もね。

いくら、愛していると言われても、行動が伴わなくては女性は、感動さえしないの。わかっていると思う

けど、馬鹿みたいな行動をとる男に、女はロマンと冒険を感じるのよ。・・」

アラーンに説教じみた恋愛論を語られていううちに、矢崎は3年前よりきれいになった彼女を見つめて

いるのが怖くなってきた。

「今 私にキスできる?あなた? できないでしょ。どうしてだかわからないでしょ?でも吉雄は馬鹿みたい

な行動をしてくれたのよ。それって女にとって刺激すぎるけど頼もしいし、素敵だわ。胸が熱くなるの。・・」

矢崎の目は、瞼が大きく開き、閉じることはなかった。

彼は、彼女に軽くキスをした。彼女は少し顔を背けた。そのあと彼は、さらに強く唇を奪い、激しく舌をいれ、

のどに絡め、吸い続けた。

顔を離した。目と目が見つめあう。矢崎は彼女に耳もとで囁いた。

「僕、今でも君のことが好きだ。忘れることができない。・・」

「だめよ。これで終わりにして。私には彼がいるのよ。ね、わかってちょうだい。・・・」

アラーンは、立ち上がると乱れた髪を櫛で直し、店のほうへ行ってしまった。

アラーンの妹は、ひとり店の中に取り残され、ヘアカットの雑誌をめくって見ていた。

机にひざをたて、顔を斜めにして、左手の指が無造作に雑誌のページをめくっていた。

「おねーちゃん、部屋で何していたの。随分長かったじゃない。」

さり気なく姉のアラーンに聞いたことが、感に触ったのかすぐに反論にでた。

「何もしていないわよ。変な勘ぐりはやめなさい。私には吉雄がいるの。あの男にはすぐ帰ってもらうわ。」

語気を荒げたためか、妹は申し訳なさそうに、頭をうなだれる。

「ごめん、そういう意味に取ったのね。でもあの男、いつまでここにいるつもりかしら。」

「すぐに帰るわよ。雨が止むまではいさせてあげようよ。」


矢崎は、アラーンと妹が、激しく会話しているのを気にしたのか、部屋からゆっくり出てきた。

「悪かったね。雨もそろそろ止みそうだ。帰るよ。今晩の夜行でラオカイに戻れそうだ。君たちも

幸せに暮らしてくれ。」

背中を向けたとき、どこか後ろ姿に哀愁を感じさせる、中年男はそのあと暫く寡黙に座り込んで

しまった。
トレンチコートのエリがどことなく汚れがついていて、しわも目立つ。

寒さのためか、襟元が首を包んでいる。


続。
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テーマ:恋愛小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2012/07/30(月) 06:00:32|
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